中国企業の株式時価総額ランキングです。1位はテンセント、2位は貴州茅台酒、3位はアリババです。トップ3を民間企業が占めています。スナップアップ投資顧問やブルームバーグのレポートを参照しました。(2022年6月)


中国企業の時価総額ランキング(2022年6月)

トップ10
順位 社名 時価総額 概要
テンセント・ホールディングス



テンセント・ホールディングス
4490億ドル

中国のSNS最大手。中国語の社名は「騰訊控股」。本社は広東。1998年、馬化騰(ば・かとう)氏が27歳のときに設立した。

パソコンが主流だった時代からメッセージソフト「QQ」で圧倒的なシェアをおさえた。 2011年からはLINEのようにチャットや無料通話ができるアプリ「微信(ウィチャット、WeChat)」を大ヒットさせた。 中国のスマホユーザーに圧倒的支持を受けるのが強み。

2019年時点の月間利用者は微信が11億3270万人、QQが8億790万人。このうち有料会員は1億6890万人。農村を含む中国全土で普及する。手軽さを武器に中国での生活に欠かせないインフラになっている。 この基盤を武器に、オンラインゲームなどの有料サービスを展開し、収益を稼ぐ。ネット出前、音楽配信、旅行予約サービスなどでも利益を得ている。

自分たちにない技術を持つ企業を次々と買収してきた。出資先は700社以上で、テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME)など60社余りが上場している。

2010年代に時価総額が33倍に膨れ上がり、日本企業で時価総額トップのトヨタ自動車(約21兆円)の2倍以上になった。10年間の時価総額の増加額はアジア企業で最大だった。 テンセントとアリババに、検索エンジン最大手「百度」(バイドゥ)を加えた3社は「BAT」と呼ばれ、中国のネット業界で圧倒的な支配権を握っている。
貴州茅台酒
(きしゅうマオタイシュ)



貴州茅台酒
3456億ドル

中国の酒メーカー。高級な伝統蒸留酒「白酒(パイチュウ)」を製造する。白酒を代表する高級酒ブランド「茅台酒」で有名。茅台酒は中国の"国酒"として接待用や贈答品に使われており、圧倒的なブランド力を誇る。売上高純利益率は約5割に上る。

貴州省茅台地区を拠点とする。「茅台酒」は高梁(コーリャン)を主な原料とし、ウイスキー、ブランデーと並ぶ世界3大蒸留酒のひとつ。中価格帯の「茅台王子酒」、低価格帯の「茅台迎賓酒」なども手掛ける。

中国は1人当たりGDPが1万ドルになり、上海や北京など沿岸部で中間所得層が厚みを増しており、消費が多様化している。これを追い風に、2010年代に株価を10倍に伸ばした。地域別の売上高は国内向けが97%、海外が3%。
アリババ・グループ・ホールディング



アリババ・グループ・ホールディング
2758億ドル

中国のネット通販最大手。1999年に発足。創業者は馬雲(ば・うん、ジャック・マー)氏。当時35歳だった。このころ、中国のインターネット普及率は1%にも満たなかった。設立当初は中国の中小企業が海外に商品を輸出するための卸売りサイト「アリババ・ドットコム」に注力した。すなわち、「企業間取引(B to B)」を専門に手掛けた。

中国の内需が爆発的に拡大する中、消費者間の取引へと広げることとし、2003年にオークションサイト「淘宝網(タオバオ)」を開設した。これは別会社を設立して事業化し、日本のソフトバンクから50%の出資を受けた。

さらに、一般消費者向けの通販サイト「天猫(Tモール)」も立ち上げ、成功させた。2004年にスタートしたオンライン決済サービス「支付宝(アリペイ)」も、順調に普及した。

その後、クラウド事業や配送システム事業などにも手を広げた。現在はSNSの「ウェイボー」、動画サイトの「優酷」を傘下に置く。

2014年にニューヨーク証券取引所に上場。世界史上最大のIPO(株式新規公開)となった。

2019年9月に創業者の馬雲氏が会長を退任した。後任の張勇(ダニエル・チャン)氏は2024年3月期までにネット通販を柱とする消費者サービスの利用者数を10億人、総取引額(GMV)を年10兆元に引き上げる目標を掲げた。
中国工商銀行
(ちゅうごくこうしょうぎんこう、ICBC)



中国工商銀行
2373億ドル

中国最大の商業銀行。国有。総資産が27兆7千億元(約460兆円)にのぼり、世界最大の銀行でもある。決済業務や担保業務に強みを持つ。

2006年に香港と上海の株式市場に上場した。上場による新規の資金調達額は約191億ドル(約2兆3000億円)と、19998年10月に上場したNTTドコモの2兆1255億円を追い抜き、当時としては世界最大となった。

海外に積極的に進出。1997年に東京支店を設立した。2007年に南アフリカ共和国、マカオ、インドネシアの銀行に相次いで資本参加した。さらに2010年にタイのACL銀行を買収したほか、2015年にはトルコのテクスティル銀行を買収した。

2019年の営業拠点は国内1万6371カ所、海外428カ所。預金残高は23兆1300億元、貸出残高は16兆2700億元に上る。
中国建設銀行
(ちゅうごくけんせつぎんこう、CCB)



中国建設銀行
1774億ドル

中国2位の商業銀行。国家のインフラ建設を担う銀行として1954年に設立された中国人民建設銀行が前身。中国工商銀行、中国銀行、中国農業銀行と並ぶ中国の4大国有商業銀行の一つ。中国各地で進められる国家的な開発プロジェクトを後押ししている。

2005年、中国の金融改革の一環として建設銀が四大国有商銀の先頭を切って香港で株式を上場した。上場に伴う資金調達額は80億ドルを超えた。これに先立ち米銀大手バンク・オブ・アメリカが「戦略投資家」として資本参加したが、金融危機後の2009年以降に順次売却されている。

貸出残高は14兆800億元、預金残高は18兆2100億元に上る。国内外の営業拠点は1万4941カ所。海外ではニューヨークや東京など30力国・地域に拠点を置く。2013年にブラジルの銀行を買収した。
ペトロチャイナ
(中国石油天然気集団、CNPC)



ペトロチャイナ
1541億ドル

石油と天然ガスの生産でアジア最大手。油田および天然ガス田の探索から開発・掘削・製油などを一貫して行っている。国内屈指の大慶油田や長慶油田を保有する。石油化工も手掛ける。ニューヨーク市場にも上場している。近年は、良質な油田の探索を進めつつ、保有する油田の生産効率向上を図っている。

2018年末のガソリンスタンド数は2万1800カ所で石油製品小売りシェアは36%。確認埋蔵量は原油が76億バレル、天然ガスが76兆立方フィート。

海外進出も盛ん。世界各地で開発を行い、2018年の原油・天然ガスの生産量は14億9200万石油換算バレルに上る。2012年から、西アフリカ地域で原油・天然ガス生産を行うオーストラリア企業、アフリカン・ペトロリアムとの間で、アフリカでの戦略投資に合意した。
中国農業銀行
(ちゅうごくのうぎょうぎんこう)



中国農業銀行
1530億ドル

中国3位の商業銀行。農村地域や地方で強みを持つ。

4大国有商業銀行の一角を占め、資産規模で国内3位。1951年に設立された農業合作銀行が前身。主に農村部での金融サービス提供機能を担ってきた。

2008年に政府による資本注入を受けて巨額の不良債権を処理。2010年に香港と上海市場に上場した。調達額は当時として世界最大の約222億ドル(約1兆9400億円)に達した。カタール投資庁など政府系ファンドや、スタンダード・チャータード銀行など欧米の機関投資家が大口の引き受けてになった。

2018年には、上海市場で最大1000億元(約1兆7千億円)の第三者割当増資を実施。中国本土での第三者割当増資では過去最大規模となった。政府系金融持ち株会社や財政省などに株式を割り当てた。これによって資本を大幅に積み増し、当局が求める不良債権処理で成果を出した。

国内営業拠点は2万3281カ所で、中国工商銀行や建設銀行を大きく上回る。ネット銀行業務や銀行カード手数料、コンサルティング業務が伸びている。
美団
(びだん、メイトゥアン、メイチュアン)



美団
1496億ドル

中国最大の口コミサイトの運営企業。

2013年に出前サービスに参入した。業界先駆けであった「餓了麼」の2009年から遅れて参入した後発組だったが、食に関する総合サービスを提供するという強みを生かして業界最大手の地位に躍り出た。

2015年8月に大衆点評と合併した。美団はもともと共同購入クーポンサイトからスタートし、その後、レストラン評価サイトなども手がけていた。一方の大衆点評はレストラン評価サイトの最大手だった。つまり、両者の合併は、業界1位と2位の統合だった。

レストラン評価サイトでは単にレストランの評価を掲載するだけでなく、レストランを予約したり、割引購入クーポンを入手したりすることができる。この結果、サービス予約サイトにおけるシェアで、2位以下を圧倒的に引き離した。

美団が料理出前サービスで先行していた「餓了麼」をあっさり抜き去ることができたのは、レストラン評価サイトでほぼ寡占的地位を押さえていたことが大きかったという。

ユーザーの囲い込みに成功した後は、ホテル予約サービスにも本格参入した。大成功を収め、旅行サイト最大手のシートリップを上回るまでになった。
寧徳時代新能源科技
(ねいとくじだい・しんのうげんかぎ、CATL)



寧徳時代新能源科技
1484億ドル

世界最大手の電気自動車用の電池メーカー。自動車向けの駆動用2次電池の世界最大手。車載リチウムイオン2次電池(LiB)で世界トップ。本社は福建省寧徳市。 2011年設立。

2021年8月、上海市政府との戦略協定締結を発表。上海にグローバル拠点を設立することとした。 研究開発拠点、製造基地などの関連プロジェクトを推進。新エネルギー分野での協力を深め、最先端の新エネ技術の研究と応用、都市交通の電気化、ハイエンド人材の育成など多方面で協力を進めていくという。
10 招商銀行
(チャオシャン、しょうしょうぎんこう)



招商銀行
1439億ドル

4大国有銀と違う持ち味で勝負する商業銀行。国有中心の大企業ではなく、個人や中小企業を開拓してきた。中小企業向けの貸し出しが多い。
11 チャイナ・モバイル



チャイナ・モバイル
1347億ドル

中国語の会社名は「中国移動」。組織上は、世界最大の携帯電話会社である中国移動通信集団の上場子会社という位置づけになっている。

中国の携帯電話サービス最大手。携帯電話の契約者は9億3500万件で国内シェア59%にのぼる。2015年に親会社の中国移動通信集団から固定ブロードバンド(BB)事業を買収。ブロードバンド契約数は1億5700万件に上る。

3G事業では中国独自のTD-SCDMA規格、4Gでは中国主導で開発したTD-LTE規格のサービスを展開。政府が経済テコ入れの一環として普及を急ぐ次世代通信規格「5G」のインフラ整備については、他社と共同で手掛けることで収益確保を目指している。2019年6月、中国当局から5G商業サービス免許を取得し、新ブランド「5G+」を発表した。
12 中国銀行
(ちゅうごくぎんこう)



中国銀行
1328億ドル

中国4位の商業銀行。4大国有商業銀行の一角を占める。

創立は1912年にさかのぼる。新中国成立後長らく外国為替専門銀行としての役割を担った。外為業務に強みを持ち、貿易決済業務では国内最大手。海外業務に積極的で、海外との人民元決済額は国内トップを走ってきた。

2012年、上海に人民元取引本部を設立した。上海の国際金融センター戦略に呼応し、中国の国有大手各行は北京の本店に続く「第2本部」を上海に設立したが、中国銀が先頭を切る形となった。

傘下に中銀香港、中銀航空租賃などを抱え、香港で保険事業も手掛ける。
13 BYD
(比亜迪、ビーワイディー)
BYD
1307億ドル

14 中国平安保険
(ちゅうごくへいあんほけん)



中国平安保険
1150億ドル

中国の大手保険会社。生命保険と損害保険の両方で中国2位。シェアは生保が17.0%、損保が21.0%。生保は「平安人寿保険」、損保は「平安人寿保険」を通じて展開している。

保険事業のほか銀行や証券、投資、インターネット金融サービスも展開している。銀行事業では2011年に子会社化した平安銀行を傘下に持つ。ヘルスケア分野にも進出。同国最大の民間健康保険会社やインターネット医療健康管理プラットフォーム、診療所標準化管理サービスなどを傘下に持つ。

日本の漢方薬大手ツムラと関係が深い。2017年にツムラと資本提携。中国平安人寿保険がツムラの第三者割当増資を引き受け、株式の10%を保有する筆頭株主になった。さらに中国で合弁会社を設立し、生薬の栽培・調達体制の強化や現地向け製品の生産・販売に共同で取り組み始めた。

フィンテックにも力を入れており、オンライン金融「陸金所」や、スマホで医療相談を受ける「平安グッドドクター」を傘下に抱える。また、傘下の平安健康医療科技がオンライン「かかりつけ医」サービスを行っている。

タイ系財閥のチャロン・ポカパンが大株主になっている。